ヘリウム原子の基底状態の計算結果

前回、ヘリウム原子の電子状態の計算方法を示したね。その計算結果のうち、今回は基底状態を示すよ。ヘリウムの基底状態は2つの電子のスピンが上向きと下向きの反対称で、波動関数の空間部分は対称関数となるね。そのため、正規直交完全系をなす対称関数で展開して

\begin{align}
\psi^{(S)}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2) &\ = \sum_{\alpha,\alpha’} s_{\alpha\alpha’}\chi^{(S)}_{\alpha\alpha’}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2)
\end{align}

エネルギー固有状態を計算したよ。その結果、基底状態のエネルギー固有値が $ E_{\rm calculate} = -79.18 [{\rm eV}]$ となって、よく知られた実験値 $E_{\rm experiment } = -78.98 [{\rm eV}] $ と比較してわずか $0.2\%$ のずれの結果を得ることができたよ。

計算結果:ヘリウム原子の基底状態

基底状態の固有関数は、水素様原子 $(1s)^2$ の固有関数 $\chi^{(S)}_{1s1s}$ と $(1s)(2s)$ の固有関数 $\chi^{(S)}_{1s2s}$の2つの項の重ね合わせ

\begin{align}
\psi^{(S)}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2) = s_{1s1s}\chi^{(S)}_{1s1s}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2) + s_{1s2s}\chi^{(S)}_{1s2s}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2)
\end{align}

で、$ s_{1s1s} \simeq 0.922 \ , \ s_{1s2s} \simeq -0.384 $ の場合に

\begin{align}
E_{\rm calculate} =\int \!\!\! \int \psi^{(S)}(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2)^* \hat{H} \psi^{(S)}(\boldsymbol{r}_1,\boldsymbol{r}_2) dV_1dV_2 \simeq -79.18 [{\rm eV}]
\end{align}

となるよ。この結果は、非摂動1電子近似の $ -108.8 [{\rm eV}] $、1次の摂動近似の $-74.8 [{\rm eV}]$、1電子近似に変分法を適用した $-77.5[{\rm eV}]$ と比較して、実験結果を非常によく一致しているね。つまり、ヘリウム原子の基底状態は $ |s_{1s1s}|^2 \simeq 0.850 \ , \ |s_{1s2s}|^2 \simeq 0.147 $ の割合で水素様原子固有状態 $\chi^{(S)}_{1s1s}$ と $\chi^{(S)}_{1s2s}$ の状態が重ね合わさった状態であることがわかったよ。ちなみに $\chi^{(S)}_{1s1s}$ と $\chi^{(S)}_{1s2s}$ は次のとおりだよ。

\begin{align}
\chi^{(S)}_{1s1s}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2) &\ = \varphi_{100}(\boldsymbol{r}_1)\varphi_{100}(\boldsymbol{r}_2)\\
\chi^{(S)}_{1s2s}(\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2) &\ = \frac{1}{\sqrt{2}}\left[\varphi_{100}(\boldsymbol{r}_1)\varphi_{200}(\boldsymbol{r}_2)+\varphi_{100}(\boldsymbol{r}_2)\varphi_{200}(\boldsymbol{r}_1)\right]
\end{align}

ヘリウム原子の電子の波動関数は2変数関数なので、3次元空間で波動関数を表すことが単純にはできないね。次回、波動関数の可視化を工夫してみよう。また、ヘリウム原子の電子のエネルギー準位を整理してまとめるよ。


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