さらに強い電場を加えたときの電子状態をシミュレーションしてみよう!(2次のシュタルク効果の計算結果を示すよ!)

前回、水素原子殻の周りを回る電子に外場として時間に依存しない電場を加えたときの変化をシミュレーションしたね。
今度はさらに強力な電場を加えたときの様子をシミュレーションしてみよう!

電場強度を10倍まで高めたときのエネルギー準位

次のグラフは電場強度を$10^{8}[{\rm V/m}]$を単位として0から100まで強くしていったときのエネルギー準位の変化だよ。
多くのエネルギー準位は電場強度に比例して下がっていくのがわかるね。これは同一主量子数のs軌道とpz軌道が混ざりあうことで自発的に生成される電気双極子と電場との相互作用で生じる結果だったね(1次のシュタルク効果)。

2次のシュタルク効果って言うんだよ!

今回着目するのは基底状態のエネルギーの変化だよ。このエネルギー領域を拡大すると次のような結果になるよ。
弱い電場ではほとんど変化が見られなかったけれども、電場を強くすると電場の2乗に比例したエネルギーの減少が見えるね。
これは2次のシュタルク効果って呼ばれるよ。でもエネルギーの変化はわずかだね。

基底状態の波動関数を確かめよう!

2次のシュタルク効果が生じているときの基底状態の成分を調べてみよう!
下の図が結果だよ。およそ99.8%は$\varphi{100}$で、0.15%が$\varphi{210}、$0.02%が$\varphi{310}$と$\varphi{410}$って感じだね。
3次元分布の見た目は基底状態と変わらないから省略するね。

2次のシュタルク効果が生じる理由は?

2次のシュタルク効果が生じる定性的な説明は次のとおりだよ。
基底状態(n=1)は自発的には電気双極子モーメントが存在しないけど、強い電場によって第1励起状態(n=2)以上ののpz軌道と結合が促されて電気双極子モーメント

\begin{align}
p_z \propto -E_z
\end{align}

が誘起されて、その電気双極子と電場の相互作用

\begin{align}
\Delta E \propto p_z E_z \propto – E_z^2
\end{align}

でエネルギーが下がるっていう感じだね。2次のシュタルク効果の正体がわかったね!パチパチ!
そして、1次のシュタルク効果とは発生メカニズムが異なることもわかったね。

さらに強い電場を加えると基底状態が入れ替わっちゃうよ!

今回最初に示したエネルギー準位の電場依存性をみるとわかるけど、さらに電場を強くすると一番エネルギーが低い状態が主量子数1のものから、もともと励起状態の重ね合わせのものに入れ替わっちゃうね。そのときの波動関数の成分をシミュレーションした結果が次の図だよ($E_z=2.0\times 10^{10}$)。
主成分は第3励起状態(n=4)の自発的電気双極子で、すこしだけ第2励起状態(n=3)の自発的電気双極子も混じっていることがわかるね。

次の図は波動関数の3次元空間分布だよ。下の方($z<0$)に電子分布が偏っているね。

まとめと今後の予定

わかったこと

  • 強い電場を加えると基底状態のエネルギーも変化する。
  • エネルギーの変化量は電場の大きさの2乗に比例する。 → 2次のシュタルク効果
  • 2次のシュタルク効果の正体は誘起電気双極子と電場との相互作用!! → 1次と2次で発生メカニズムが異なる

今後の予定(宿題メモ)

  • 今度は外場として時間に依存しない磁場を加えてみよう!
  • 1次のシュタルク効果を示す電気双極子の分極率を調べてみよう!
  • 2次のシュタルク効果で生じる電気双極子の分極率を調べてみよう!
  • 電場をもっともっと強くしたときの状態(電離状態との結合)を調べてみよう!


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