電子が持つ内部自由度「スピン角運動量」を復習しよう!

電子は原子の周りの軌道を回っているね。この運動は軌道角運動量という物理量で表すことができるんだったね。
一方、電子にはスピン角運動量と呼ばれる、古典力学の自転に対応する物理量が存在するよ。
このスピン角運動量の任意の成分が、不思議にも$\hbar/2$あるいは$-\hbar/2$のどちらかの値しか取り得ないことがシュテルン―ゲルラッハの実験にて示されたんだったね。
通常、スピン角運動量のz成分が$\hbar/2$の状態を「上向きの状態」、$-\hbar/2$の状態を「下向きの状態」とするよ。
このように2つの状態しか取り得ないスピンは「スピン1/2の系」とも呼ばれるよ。
なお、スピン角運動量は角運動量の一種だけれども、軌道角運動量とは独立した量だよ。

スピン1/2の系の数理

スピン角運動量は $\hat{\boldsymbol{S}}$ と表し、通常の角運動量の同様の取り扱いを行うことができるよ。

スピン角運動量の交換関係

\begin{align}
[\hat{S}_x, \hat{S}_y] = i\hbar \hat{S}_z \ , \ \
[\hat{S}_y, \hat{S}_z] = i\hbar \hat{S}_x \ , \ \
[\hat{S}_z, \hat{S}_x] = i\hbar \hat{S}_y
\end{align}

スピン角運動量の固有状態

スピン角運動量のz成分を $\hat{S}_z$ 、その固有値を $\pm\hbar/2$ 、対応する固有関数を $\alpha$ と $\beta$ と表すと、次の関係があるね。

\begin{align}
\hat{S}_z \alpha &= \frac{\hbar}{2} \alpha \\
\hat{S}_z \beta &= -\frac{\hbar}{2} \beta
\end{align}

一般に、角運動量 $\boldsymbol{L}$ の大きさを $l$ とした場合、$\boldsymbol{L}^2 \varphi_{lm} = l(l+1)\hbar^2 \varphi_{lm}$という関係があったので、
スピン角運動量も同様な関係(スピンの角運動量の大きさは$s=1/2$)

\begin{align}
\hat{\boldsymbol{S}}^2 \alpha &= s(s+1) \hbar^2 \alpha =\frac{3}{4}\hbar^2 \alpha\\
\hat{\boldsymbol{S}}^2 \beta &= s(s+1) \hbar^2 \beta =\frac{3}{4} \hbar^2 \beta
\end{align}

が存在するよ。

パウリのスピン行列

スピン角運動量の2つ固有関数を

\begin{align}
\alpha = \left(\matrix{ 1\cr 0} \right) \ , \ \ \beta = \left(\matrix{ 0\cr 1} \right)
\end{align}

と表した場合、スピン角運動量は次のような行列で表すことができるよ。

\begin{align}
\hat{S}_x &= \frac{\hbar }{2} \left(\matrix{ 0 & 1\cr 1 & 0 } \right) = \frac{\hbar }{2}\, \sigma_x \\
\hat{S}_y &= \frac{\hbar }{2} \left(\matrix{ 0 & -i\cr i & 0 } \right) = \frac{\hbar }{2}\, \sigma_y \\
\hat{S}_z &= \frac{\hbar }{2} \left(\matrix{ 1 & 0\cr 0 & -1 } \right) = \frac{\hbar }{2}\, \sigma_z
\end{align}

この $\boldsymbol{\sigma} \equiv (\sigma_x, \sigma_y, \sigma_z) $ がパウリのスピン行列と呼ばれ、元の交換関係を満たすよ。
そして、このパウリのスピン行列はエルミート性ユニタリ―性を満たし、さらに
$|\boldsymbol{\sigma}|^2 = \sigma_x^2 + \sigma_y^2 + \sigma_z^2 = 1 $ を満たすよ。


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