静磁場とスピン磁気モーメントとの相互作用(異常ゼーマン効果)を復習しよう!

原子の周りを回る電子は軌道角運動量を持ち、そしてこれに付随した軌道磁気モーメント

\begin{align}
\hat{\boldsymbol{M}}_L = – \frac{e}{2m_e} \hat{\boldsymbol{L}}
\end{align}

を持つことは、この前復習したね。一方、スピン角運動量もスピン磁気モーメントって呼ばれる同様の磁気モーメント

\begin{align}
\hat{\boldsymbol{M}}_S = – g\frac{e}{2m_e} \hat{\boldsymbol{S}}
\end{align}

を持つよ。$g$ はランデのg因子と呼ばれ、粒子の種類ごとに固有の値をとるよ。

ランデのg因子の値

電子のg因子の値は、ディラック方程式から導かれる値が「$2$」、量子電磁気学的効果を含めると「$2.0023193044$」だよ。また、陽子と中性子のg因子は実験的にそれぞれ、次の値となることがわかっているよ。

\begin{align}
\hat{\boldsymbol{M}}_p &= g_p\frac{e}{2m_e} \hat{\boldsymbol{S}}_p \ , \ \ g_p = 2\times2.7928 \\
\hat{\boldsymbol{M}}_n &= g_n\frac{e}{2m_e} \hat{\boldsymbol{S}}_p \ , \ \ g_n = -2\times1.9130
\end{align}

静磁場とスピン磁気モーメントの相互作用

軌道角運動量で生じる軌道磁気モーメントは静磁場と相互作用することでエネルギーがシフトしたね(正常ゼーマン効果)。スピン角運動量で生じるスピン磁気モーメントも静磁場と相互作用することでエネルギーがシフトするよ。これは異常ゼーマン効果と呼ばれるよ。静磁場とスピン磁気モーメントの相互作用はg因子を「2」として

\begin{align}
\hat{H}_S = -\boldsymbol{B}\cdot\hat{\boldsymbol{M}}_S = \frac{e}{m_e} \boldsymbol{B} \cdot \hat{\boldsymbol{S}}
\end{align}

これを、静磁場中の水素原子の電子のハミルトニアンに加えると、

\begin{align}
\hat{H} = \hat{H}_0 + \frac{e}{2m_e} \boldsymbol{B}\cdot \left( \hat{\boldsymbol{L}} + 2 \hat{\boldsymbol{S}} \right)+ \frac{e}{2m} \boldsymbol{A}^2
\end{align}

となるね。これが、軌道磁気モーメントとスピン磁気モーメントを考慮した場合の静磁場中のハミルトニアンだね。ちなみに、このハミルトニアンに対する時間に依存するシュレディンガー方程式

\begin{align}
i\hbar \frac{\partial }{\partial t} \Psi = \left[\hat{H}_0 + \frac{e}{2m_e} \boldsymbol{B}\cdot \left( \hat{\boldsymbol{L}} + 2 \hat{\boldsymbol{S}} \right)+ \frac{e}{2m} \boldsymbol{A}^2\right]\Psi
\end{align}

パウリの方程式って呼ばれるよ。

正常ゼーマン効果・異常ゼーマン効果によるエネルギー準位の変化

静磁場の向きをz軸に取るよ。そして、静磁場が弱い場合には、$\boldsymbol{A}^2$ の項は無視することができるので、次の固有方程式を満たすよ。

\begin{align}
\left[ \hat{H}_0 + \omega_L \left( \hat{L}_z + 2 \hat{S}_z \right) \right] \varphi_{nlms_z} = E \varphi_{nlms_z}
\end{align}

$\omega_L =eB_z/2m_e$ (ラーモア角振動数)とおいているよ。この固有方程式は、固有関数の量子数を $n, l, m, s_z$ と設定することですでに解けているよ。固有関数 $\varphi_{nlms_z}$ の固有値は次のとおりだよ。

\begin{align}
E = E_n + \hbar \omega_L ( m + 2s_z)
\end{align}

$E_n$ は外場が無い場合のエネルギー準位だよ。エネルギーが小さい順番に、$E_n$ からのズレを表にまとめるよ($n=1\sim 3$)。ランデのg因子の値を「2」とした場合、エネルギー準位は主量子数で決まるエネルギーを基準として、$\hbar \omega_L$ の整数倍だけずれるね。
そして、エネルギー縮退が生じている準位が存在しているね。

$n$ $\Delta E$ 固有状態
$1$ $-\hbar \omega_L$ $\varphi_{100\downarrow}$
$\hbar \omega_L$ $+\varphi_{100\uparrow}$
$2$ $-2\hbar \omega_L$ $\varphi_{21-1\downarrow}$
$-\hbar \omega_L$ $\varphi_{200\downarrow}$ $\varphi_{210\downarrow}$
$0$ $\varphi_{21+1\downarrow}$ $\varphi_{21-1\uparrow}$
$+\hbar \omega_L$ $\varphi_{200\uparrow}$ $\varphi_{210\uparrow}$
$+2\hbar \omega_L$ $\varphi_{211\uparrow}$
$3$ $-3\hbar \omega_L$ $\varphi_{32-2\downarrow}$
$-2\hbar \omega_L$ $\varphi_{32-1\downarrow}$ $\varphi_{31-1\downarrow}$
$-\hbar \omega_L$ $\varphi_{300\downarrow}$ $\varphi_{310\downarrow}$ $\varphi_{320\downarrow}$ $\varphi_{32-2\uparrow}$
$0$ $\varphi_{31+1\downarrow}$ $\varphi_{31-1\uparrow}$ $\varphi_{32+1\downarrow}$ $\varphi_{32-1\uparrow}$
$+\hbar \omega_L$ $\varphi_{300\uparrow}$ $\varphi_{310\uparrow}$ $\varphi_{320\uparrow}$ $\varphi_{32+2\downarrow}$
$+2\hbar \omega_L$ $\varphi_{32+1\uparrow}$ $\varphi_{31+1\uparrow}$
$+3\hbar \omega_L$ $\varphi_{32+2\uparrow}$


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