「スピン-軌道相互作用」を復習しよう!

前回、スピン角運動量で生み出されるスピン磁気モーメントを考慮して、静磁場を加えた場合の水素原子のエネルギーシフト「異常ゼーマン効果」を復習したね。実は、スピン磁気モーメントは、軌道磁気モーメントと直接相互作用して、「スピン-軌道相互作用」と呼ばれるエネルギーシフトが生じるよ。今回は、この相互作用の表式を導出するよ。

電子の周りを回る電子で生み出される磁場

古典電磁気学によると、電子の周りを回る電子は磁場を生み出すね。この磁場は、原点に磁気双極子モーメント $\boldsymbol{M}$ が原点に存在することで生じる磁場と等価だね。
位置 $\boldsymbol{r}$ における磁場は

\begin{align}
\boldsymbol{B}( \boldsymbol{r} ) = \frac{\mu_0}{4\pi} \left[ \frac{3\boldsymbol{M}\cdot\boldsymbol{r}}{r^5} \boldsymbol{r} – \frac{\boldsymbol{M}}{r^3} \right]
\end{align}

となるね。この磁場と電子のスピン磁気モーメントとの相互作用を考えるので、$\boldsymbol{r}$ を電子の位置ベクトルとすると、$\boldsymbol{M}\cdot\boldsymbol{r} = 0$ だよね。そして、この $\boldsymbol{M}$ を軌道磁気モーメント $\hat{\boldsymbol{M}}_L = -e\hat{\boldsymbol{L}}/2m_e$ で置き換えると

\begin{align}
\boldsymbol{B}( \boldsymbol{r} ) = -\frac{\mu_0}{4\pi}\, \frac{\hat{\boldsymbol{M}}_L}{r^3} =\frac{\mu_0 e}{8\pi r^3m_e }\hat{\boldsymbol{L}}
\end{align}

となるね。これが、原子の位置に軌道磁気モーメントをおいた場合に、電子の位置で生じる磁場の表式になるね。この磁場と電子のスピン磁気モーメントが相互作用することで、エネルギーは $ \Delta E = – \langle \hat{\boldsymbol{M}}_S \cdot \boldsymbol{B} \rangle$ だけシフトするね。なので、ハミルトニアンは次のようになるね。

\begin{align}
\hat{H} = \hat{H}_0 + \hat{H}_{LS}=\hat{H}_0 – \boldsymbol{M}_S \cdot \boldsymbol{B} = \hat{H}_0 + \frac{g\mu_0 e^2}{16\pi r^3m_e^2 }\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}}
\end{align}

ランデのg因子を「2」、$\mu_0$ を光速との関係式 $c^2 = 1/\epsilon_0\mu_0$ で書き直すと

\begin{align}
\hat{H} = \hat{H}_0 – \boldsymbol{M}_S \cdot \boldsymbol{B} = \hat{H}_0 + \frac{e^2}{8\pi \epsilon_0 c^2 r^3 m_e^2 }\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}}
\end{align}

となるね。こちらの方が一般的な表式だね。

$\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}}$ の固有状態

「スピン-軌道相互作用」項の $\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}}$ は、

\begin{align}
2\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}} = (\hat{\boldsymbol{S}} + \hat{\boldsymbol{L}})^2 – \hat{\boldsymbol{S}}^2 – \hat{\boldsymbol{L}}^2
\end{align}

と変形できて、右辺の各項 $\hat{\boldsymbol{J}}^2 = (\hat{\boldsymbol{S}} + \hat{\boldsymbol{L}})^2, \hat{\boldsymbol{S}}^2, \hat{\boldsymbol{L}}^2$ と、$\hat{J}_z = \hat{S}_z + \hat{L}_z$ は互いに交換するから、
これらの固有関数となる量子数、$j , s, l, m_j$ を用いた、同時固有関数 $\varphi_{jlm_js}$ 固有状態となるね。

\begin{align}
\hat{\boldsymbol{S}}\cdot\hat{\boldsymbol{L}} \varphi_{jlm_js} = \frac{\hbar^2}{2} \left[ j(j+1) – l(l+1) – s(s+1) \right] \varphi_{jlm_js}
\end{align}

ただし、電子のスピンの大きさは「1/2」なので $s = 1/2$ だね。また、角運動量の合成の議論から $ l – 1/2 \leq j \leq l + 1/2 $ ($j \geq 0$)、$ -(l + 1/2 ) \leq m_j \leq l + 1/2 $ となるよ。

スピン-軌道相互作用を含めたハミルトニアンの固有状態

スピン-軌道相互作用のハミルトニアンに固有関数 $\varphi_{jlm_j}$ ($s$は$1/2$で固定なので省略)を作用させた結果は

\begin{align}
\hat{H}_{LS} \varphi_{jlm_j}=\frac{\hbar^2e^2}{16\pi \epsilon_0 c^2 r^3 m_e^2 }\left[ j(j+1) – l(l+1) – \frac{3}{4} \right]\varphi_{jlm_j}
\end{align}

となるね。右辺の係数に $r$ 依存性があるけど、$\varphi_{jlm_j}$ が固有関数になっているね。スピン-軌道相互作用項のエネルギー固有値は

\begin{align}
\hat{E}_{LS} =\frac{\hbar^2e^2}{16\pi \epsilon_0 c^2 r^3 m_e^2 }\left[ j(j+1) – l(l+1) – \frac{3}{4} \right] \int \varphi_{nljm_j}^*\,\frac{1}{r^3}\, \varphi_{nljm_j} dV
\end{align}

となるね。固有関数の空間積分を具体的に計算することで、具体的な値が決定できるね。次回はエネルギー固有値を調べてみよう!


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